虚うつろ木きノの咎人とがびと

空木罪人

霜月しもつきはるか

• 刻ときは満みちて月つきは陰かげる 夜よるの穹そらを鎖とざす蜘蛛くもの罠わな(す)

  時辰已到 月亮隱蔽 蜘蛛的網遮蔽了夜空

• 掛かかる蝶ちょうの羽はねは甘あまく 鮮血せんけつ(ち)の混まざる泪なみだの如ごとし

  收下被捕捉的蝶翼 如混入鮮血的眼淚

• 彼岸ひがんを映うつす眼まなこ 逃のがれた御魂みたまを

  眼裡映照的彼岸 被逃走的靈魂

• 封ふうじた籠かごの中なか 君きみに届とどく慟哭どうこく

  在被封起來的籠裡 為了傳達給你的悲鳴

• 虚うつろな躯からだの侭まま 誰だれかと交まじわる ゆめ

  盡空虛的身軀 與誰交錯的夢

• 絡からめた指ゆびと指ゆびで 孤独こどくを埋うめる 現うつつの咎人とがびと

  用交扣的小指 埋葬孤獨 真實的罪人

• 風かぜを塞ふさぐ塚つかに宿やどり 虚実きょじつ(にせ)の日々ひびを逝いき続つづけても

  依附被風包圍的墓塚 虛偽的日子依然逝去

• 光ひかる蝶ちょうの羽はねは脆もろく 古いにしえの骸むくろの如ごとし

  脆弱光耀蝶翼 如遠古骸骨

• 曝さらした喉元のどもとへと刃やいばを突つき立たて

  刀刃向曝露的頸脖突刺

• 苦痛くつうに歪ゆがむのは 嗚呼ああ 生命いのちの慟哭どうこく

  將苦痛扭曲的是 啊啊… 生命的悲泣

• 虚うつろに燃もえる焔ほむら 偽いつわりばかりの熱ねつ

  將空虛燒盡的火焰 盡是虛偽的溫熱

• 影かげ亡なき貌すがた(かたち)なれど 空木うつぎを焦こがす愛かなしき抜ぬけ殻がら

  變成死者的樣貌 將空木燒盡悲哀的空殼

• 未練みれんを嘆なげくだけの 愚おろかな蝶ちょうたち

  只悲嘆留戀的愚蠢之蝶們

• 欺あざむく現世うつしよは 赦ゆるしを請こう慟哭どうこく

  欺騙的現世 為了請求饒赦的慟哭

• 虚うつろな地平ちへいの果はて 死人しびとが彷徨さまよう穹そら

  在空虛的地平線的盡頭 逝去之人徬徨的天空

• 陽炎かげろう 辿たどりながら 孤独こどくな魂こころ 集あつめる旅人たびびと

  一邊到達虛幻一邊收集孤獨的靈魂的旅人

• 虚うつろな姿すがたの侭まま 誰だれかを求もとめる ゆめ

  盡空虛的姿態 與誰尋求的夢

• 拗こじれた縁えにしの袖そで 素肌すはだに触ふれる現うつつの咎人とがびと

  坳擰因緣之袖 觸摸肌膚 真實的罪人