野性やせいの同盟どうめい

野性的同盟

柴咲しばさきコウこう

柴崎幸

• 挨拶あいさつのない手紙てがみを書かき損そんじたまま大事だいじにしたい折目おりめが嵩張かさばっていく

  將錯就錯而沒有寫上問候的信 想好好折起卻讓折線範圍不斷擴大

• 綯ない交まぜの念ねん僕ぼくは埋うめ尽つくしたものの相変あいかわらず君きみへ送おくれず仕舞しまい

  填滿在我心中那交織起來的意念 還是如往常一般無法傳達給你 就此無疾而終

• ふしだらな世界せかいを縫ぬって引ひき合あうようにふたりは野性やせいを有ゆうしている

  將這放蕩不羈的世界縫合起來 為了讓彼此能互相吸引而染上了野性

• ねえ如何どうして今いま会あえないでいるかを教おしえて欲ほしいよ声こえが聴ききたいよ

  吶 為何現在無法見到面呢 想要你告訴我原因 想聽見你的聲音

• 知しっていたんだ前まえに云いっていたね君きみにとっては沈黙ちんもくだけが正ただしいと

  你曾說過你已經明白了對吧 對你而言只有沈默才是正確的

• 最初さいしょの出会であい遥はるか秋空あきぞらを思おもい返かえせば内緒ないしょの願ねがいもじき片付かたづいていく

  如果試著去想起一開始相遇時那片遙遠的秋日天空 悄悄許下的心願也會立刻被清除掉

• 分わかたれた未来みらいの今日きょうが割わり出だす過去かこひとりじゃ野性やせいを無なくしそう

  已經明瞭未來的今天 就這樣一個人推論出過去 像是失去了野性一般

• ねえ如何どうして今いま会あいたくなったかを考かんがえて欲ほしいよ顔かおが拝おがみたいよ

  吶 想要你去思考「為何現在我變得想見你」 想要瞻仰著你的容顏

• 憶おもえているちょっと泣ないていたね僕ぼくにとっても沈黙ちんもくだけは正ただしくて

  還記得那時候稍微的哭了一下呢 對於我來說也是如此 只有保持沈默才是正確的

• 真相しんそうなんて何時いつだって物音ものおと 一ひとつしないしじま一点いってんに宿やどっているんだ

  真相這種東西不論何時都不會只有一種聲響 寂靜就這樣從中心蔓延開來

• そう「生いきている」と言いう絶望ぜつぼうこそが君きみと僕ぼくとを結ゆわえている野性やせい

  正因為有「存活著」這樣的絕望 野性才會將你我相繫

• さあかつての少年しょうねん少女しょうじょ等らは分厚ぶあつい諂へつらいを着込きこんでいるころでしょう

  啊 曾經的少年少女們都已經是將奉承深植在內心的年紀對吧

• ああ冷ひえて来きた思おもい出でしてしまうのは君きみの無言むごんの吐息といきの白しろさ潔いさぎよさ

  在那樣寒冷來襲之際 所想起來的是你那無聲歎息的純粹及坦率