鼓動こどう

綾野あやのましろ

• 小ちいさな頃ころ 信しんじてた夢ゆめは 今いまじゃ 暗くらい闇やみの底そこに

• それなのに耳みみ澄すませば

• 鼓動こどうは鳴なり止やまず 胸むねの奥おく 叩たたいてる

• どうか ねぇ 教おしえて

• 何なにのため君きみは刻きざみ続つづけるの?

• 世界せかいは偽いつわりを纏まとって 全すべてを

• 美うつくしく塗ぬり替かえてく 鮮あざやかに

• 小ちいさな手てのひらで夢ゆめはいつしか

• 粉々こなごなに壊こわれていた ただ願ねがったのは

• 誰だれかの愛あいにそっと触ふれていたかった

• ただそれだけで良よかった

• 『かけがえのない明日あしたが…目めの前まえ ほら 君きみを待まっているよ』

• そんな明日あしたはどこにも見当みあたらなくて

• また夜空よぞらを見上みあげている

• もう何なにもいらない…

• 鳴なり止やまない君きみに耳みみを塞ふさいだ

• 世界せかいを包つつみ込こむ夜よるが このまま

• 明あけてしまわないように 目めを閉とじた

• 一人ひとりじゃもう抱かかえきれない絶望ぜつぼうを

• 明日あしたが繰くり返かえしまた連つれてくるだけ

• 悲かなしみ増ふやすだけのための未来みらいなら

• 二度にどと来こなくたっていいんだ

• 空からっぽの心こころを 打うち続つづける鼓動こどうは

• 未いまだに何なにかをそっと探さがし求もとめるように

• 誰だれにも届とどかない声こえ あてもなくただ

• 薄うすれゆく闇やみへ また飲のみ込こまれてく

• 滲にじんだ空そらが少すこしずつ

• また「今日きょう」を映うつし出だして…

• 世界せかいは偽いつわりを纏まとって 全すべてを

• 美うつくしく塗ぬり替かえてく 鮮あざやかに

• 小ちいさな手てのひらで夢ゆめはいつしか

• 粉々こなごなに壊こわれていた ただ願ねがったのは

• 誰だれかの愛あいにそっと触ふれていたかった

• ただそれだけで良よかった